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月一回掲載。書かない月もあります。

2020年12月

音楽院で受けている授業のおよそ半分は電子音楽関係の授業で、こちらに来てからはもっぱらパソコンと向き合っている。芸大の大学院でも電子音楽を経験したが、そこでは生楽器と電子音楽を組み合わせるミクスト作品を制作することに重きが置かれていて、MAXの学習が中心だった。こちらでもMAXの授業を受けてはいるが、現在集中的に学んでいるのは純粋な電子音楽作品を制作し実演すること(アクースモニウム)であり、ReaperというDAWソフトの学習である。これは自分にとって初めての経験だ。日本の音大作曲科では、少なくとも東京芸大ではDAWはカリキュラムになく、器楽の作曲とは別ジャンル、別の世界のように考えられているように思う(もちろん器楽作曲と電子音楽を横断的に勉強できる学校もあるが、少数派だろう)。日本で耳にしたアクースモニウム作品はポップであったり退廃的であったり、非常に自由だったので、率直に言って、アクースモニウムの世界は制約のない何でもオッケーな世界だと思っていた。ところがフランスでいま学んでいるアクースモニウムは、歴史的に培われてきた美学に立脚した、非常に伝統的な音楽だと感じている。というのは、ある先生とのランデブーがあったからで、先生に自分で作ってみた音を聴いてもらったところ、先生は音を聴いた途端に顔をしかめ、即座に音響処理の問題点を言い当てられ、さらにスタイル上の問題を指摘されてしまった。けっこう遠慮のない表現で言われてしまったので多少むっとしてしまったが(ここまで書くとどの先生か推測できてしまうだろうか)、先生の圧倒的な経験と知識に感心したし、自分が未だ持ち得ていない聴覚の存在を思い知らされた。さらに言うと、ちょっとエクリチュールの勉強にも似ていると感じた。特定のスタイルに従って、耳を十分に働かせながら、音と音を精確に並べていくという作業は電子音楽の世界でも求められることで、この訓練を繰り返していくうちに、習得するべき「よい耳」が形成される……。パリの1年目で勉強しているアクースモニウムは、芸大の1年目で勉強した和声に相当しているような気がしている。

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現在パリは夜間外出禁止。レストランやバーのやっていない街は半分眠っているようで、あまり年末感を感じられず。