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月一回掲載。書かない月もあります。

2021年4月

4月のバカンスも終わろうとしていて、いよいよ年度末という気分になってきている。聞くところによると6月上旬か中旬くらいでだいたい授業が終わってしまうらしい。今年度に残している大きなイベントはあと2つほど。まずバカンスが開けてすぐに室内楽作品の録音がある。通常は演奏会のなかで作品発表ができるのだが、今年度は結局11月以降は一度も演奏会がなかった。今回録音するのはソプラノ1人を含む5人のための作品。器楽作品を演奏してもらうのは実に1年と数ヶ月ぶりのことで、ずいぶん間が空いてしまった。録音のスケジュールを見るとリハーサルも満足にはできないようで、どう転ぶか分からないけれど、忘れかけてしまった、作品を音にすることのよろこびを思い出せる機会になるといい。それとあともうひとつ、楽曲分析の発表が控えている。授業の半分の時間(90分間)を使って任意の作品の分析をプレゼンしなければいけない。1年目にこれだけ大きな発表が待ち構えているとは知らなかったので、頭を抱えたのだけれど、もう開き直ってやるしかない。分析の授業を受けていて、また発表の準備をしていてつくづく思うのだけれど、楽曲分析とは本当にマニアックな勉強だ。音符の並び方を数理的に観察するだけでは完結しないし、作品の成立背景を把握するだけでも足りない。また理論と歴史の知識があれば事足りるのかといえばそうではないような気もしていて、おそらく楽曲分析には、分析者自身の音楽経験が大いに反映されてくる。例えばピアノを演奏するひと、歌をうたうひと、打楽器を演奏するひととでは楽譜の読み方が違うだろうし、極端に考えれば自分と全く同じように音楽を感じ取るひとは他にいないだろう。客観的なことがらを整理しつつ、最後は個人的に語らなくてはいけない、なんともはっきりしない、曖昧な勉強のように感じられて、当然そこがおもしろいところなのだが、ときどき途方に暮れる。

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今月は電子音響作品の録音もあった。こちらも本来なら演奏会で発表できるもの。演奏会は開催できないが、ホールに設置された23個のスピーカーを用いて作品を演奏するという機会が得られた。これも日本では経験しなかったことで、演奏会に足を運んだことはあったものの、自分で演奏するとなると非常に難しかった。スピーカーのレベルの上げ下げなんて単純だと想像していたけれどまったくそんなことはことはなく、自分の作品の性格と、各スピーカーの位置と特性、ホールの特徴をきちんと把握しないでは満足いく演奏はできないのだった。録音前に2回先生立会いのもとリハーサルを行ったが、厳しい耳で、緻密に指導された。いたって当たり前の感想だが、電子音楽は一人で完結するたやすい音楽のようでいて、奥が深いのだ…。録音がまだ届いていないものの、手に入り次第公開したい。