先月の記録

月一回の更新を目標に日記を書きます。

2023年4月

今年受講している「オーケストレーション入門」の試験において、17時間かけてオーケストレーションを仕上げるという缶詰試験を経験しました。こうした類の試験は、過去には芸大作曲科の入試において8時間、パリ音楽院の入試において12時間のものを経験していますが、17時間(6時30分-23時30分)のものは初めてでした。そろそろ最後にしたいものです。ベートヴェンあるいはバルトークのスタイルでというテーマがあり、それぞれの作曲家のピアノ曲がタイトルを伏されて出題されます。この試験に臨むにあたり、空腹状態に弱い自分にとってのいちばんの関心ごとは、試験中いかに食事をとるかということでした。音楽院の入試では、穴子の蒲焼き弁当を用意したにもかかわらず箸を忘れてしまうという失敗を犯しているので、今回の試験ではそれを取り返したい、試験中でもお米を食べて万全の体調で臨みたいという目標がありました。試験1週間前くらいから、弁当の構想を練り始めます。試験前に納豆ご飯を1杯食べた上で3食分は持参する必要があるだろう、朝おにぎりをにぎるのは少し時間がかかるので、タッパーにご飯をつめた簡単な弁当にしよう、おかずには、弁当用の冷凍食品が手に入らないのであまりバリエーションを出せなさそうだが、梅干しと、海苔と、ランチョンミートを焼いたものと、ブロッコリーの和え物2品程度があれば十分だろう、それからフルーツとチョコレートも用意して…。弁当作りは試験前日の夕方から始まります。ブロッコリーを塩水で軽く茹で、半分は鰹節と醤油で和え、また半分はベーコンと一緒にオリーブオイルで炒めます。食べ慣れた味が望ましいのです。買ってあったホワイトアスパラを使ってもう一品作ろうとしましたが、味がうまく決まらず不採用、その場で食べてしまいます。そして最後にランチョンミートをフライパンで焼きます。じっくり焼いて油を出したいので、時間をかけます。焼けば焼くほど出て来る油を眺めつつ、イヤホンでバルトークを聴いて気持ちを高めます。聴けば聴くほど、知れば知るほど凄みの増す作曲家だと感じます。民俗音楽を芸術音楽の語法に取り入れるという企てを、彼ほど強靭な知性でもって成し遂げた人が他にいるでしょうか。まだまだ学ぶことは尽きません…。