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月一回掲載。書かない月もあります。

2020年8月

渡仏まであと約二週間。それまでにやること:音楽院への登録。それに伴う保険の加入。書籍・楽譜の自炊。SIMフリー携帯の購入。衣類の買い足し。散髪。メガネ新調。諸々の住所変更手続き。など。ビザ申請のために2週間ほど東京に滞在してから富山に帰ってきた。手続きのためにフランス大使館を2回訪れたほかは、少し散歩してパン屋をめぐる程度のことしかしていない。しかしおもしろかったな東京は。昨日は東京はおもしろいということをフランス語の先生に説明しようとして、なぜかと聞かれてうまく答えられなかった。パン屋がたくさんあるから?飛行機は関空発の直行便を予約したので、次に東京を訪れるのは当分先になるだろう。

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次に書く作品のことを考えている。昨年声を用いた作品をいくつか書いた経験から、次は声の起源となる呼吸について考えてみる。歌手にしろ楽器奏者にしろ、その演奏行為の動因となる呼吸。聴者であれろう者であれ行なっている呼吸。運動すると激しくなる呼吸。眠りについたとたんに深く穏やかになる呼吸。ゾウの呼吸とネズミの呼吸。音楽が時間芸術であるように、呼吸もまた時間芸術である。音楽に終わりがあるように、呼吸にもまた終わりがある。しかし呼吸はいつ始まるのか。こうしている間にも僕は呼吸している。普段は意識しない呼吸。しかしなくてはならない呼吸。

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13時54分金沢駅初サンダーバード26号大阪行きに乗る。車内に持ち込む軽食には芝寿司よりドンクの塩パンと明太フランスを選ぶ。これから日常的に味わうことになるであろう小麦の味。電車に乗る前に日本の携帯は休止しておいた。小さい頃から聴き馴染んできたブーニンの録音が無性に恋しくなってしまった。琵琶湖が左手に見えてきた。あと5分のご乗車で京都です。ひとつひとつが見納めである。イオン、くら寿司、山崎ウイスキー館、立命館大、日世のソフトクリーム、マルハン、アサヒビール、さわやかジャパン、東横イン・・・・・・大阪駅。関空快速に乗り換える。インターネットができないので、電子掲示板のニュースを見るしかない。藤井二冠の顔がいい。りんくうタウンで途中下車して、スーパー銭湯に行っておく。出国前にいい風呂に入ると、究極的に感傷的になれる。空港に着くと、ほとんどの飲食店が20時で終了していて、しかたなくすき家に。国際線のロビーは非常に人が少なく薄暗く不気味で、不安を煽られるよう。搭乗まで時間があるのでひたすら待っている。ビザを手に入れ、音楽院の登録も済ませ、アパートもすでに契約しているにもかかわらず、フランスで新しく生活を始めるという実感がいまだに湧かない。